家賃の値下げ、減額?それとも猶予?
所得税の確定申告で不動産所得の申告をする場合、必ず契約内容を確認することになる。例えば飲食店に貸店舗として、毎月30万円の家賃を受け取る賃貸契約になっていると仮定する。ところがコロナの影響でテナントである飲食店の売上が激減しており、10万円しか家賃の振り込みがなかったとする。こういう場合、所得税の申告では家賃収入はいくらで計上するか?
答えは契約どおりの30万円/月。「そんなばかな!10万円しか入金がないのにどうして30万円の家賃収入として計上するの?」そのとおり!事前連絡なしの家賃の不払いは空室より始末が悪い。税務上も最悪の結果となる。
差額の20万円は「未収金」として資産計上となる。つまり入金がなかったとしても家賃として請求できる権利が確定したとみるのだ。これが税金の怖さだ。「入金もないのに税金が払えないではないか!」と言いたい気持ちはよく分かる。
こういう場合、通常、テナントから家賃の値下げ交渉があるはずだ。だから、家賃値下げの合意書を取り交わしておかなければならない。ポイントはその値下げが家賃の「減額」なのか、それとも「支払い猶予」なのかをはっきりさせておく必要がある。
「○○年○月分から○○年○月分までの期間の家賃を××万円に減額する」との合意書を取り交わしておかないと税務上の問題が生じてしまう。特に「減額」なのか「支払猶予」なのかをはっきりさせておかなければ税務上の判断もできない。「支払猶予」なら期限が来たらまた元の家賃に戻ることになり、さらに猶予していた金額は「未収金」なので、いずれ回収することになるからだ。また、合意書に記載する場合、期限をはっきりさせておかなければならない。「コロナ収束時点まで」という不明確な期限は避けるべきだ。
またテナントが「家賃支援給付金」の申請をして給付金を受け取っておれば、家主にも連絡があるはずだ。その場合は家賃減額後の金額を基礎に申請していなければならないから注意が必要だ。
入居者が事業者でなく一般の人なら、なかには職を失った人もいるかもしれない。生活に困窮した人を助けるため「住居確保給付金」という制度がある。詳細は各市町村のホームページで確認できる。