テクノストレス
「IDとパスワードを入力してください」
くそぉ~!何回、同じことをさせるんだ!」
何度やっても弾かれる。私にとってコンピュータは鬼門だ。
IDとパスワード、間違いなく入力しているはずなのに「ログインできません。入力内容をご確認ください」の繰り返しだ。
どないなっとんねん!
コンピュータはアホか!
本人確認でIDとパスワードの入力が必要なのだろうが、いい加減、俺のこと覚えろよ!と言いたくなる。顔認識でけへんのか!バカタレが!
「あれ?花村さんは早くからコンピュータを使いこなしておられるので、デジタル人間かと思っていましたが‥‥」。
「とんでもない、私はデジタル音痴のアナログ人間です。コンピュータはカンを頼りにいじり回しているだけ。自慢じゃありませんが、私は今まで一発でログインできたことは一度もありません」
コンピュータと付き合い始めた頃、IDとパスワードは覚えやすいように簡単な設定にしていた。するとパスワードは8桁以上にしなさいとか、アルファベットに大文字を加えなさいとか言ってくるので変更していたら、そのうち分からなくなってしまった。
その都度、メモ帳には記録しているので調べれば何とかなるのだが、めんどくさい。パスワード管理のソフトもあるらしいが使い方がわからない。
そうこうしているうちにコンピュータのバカさ加減に辟易するようになってきた。
アナログ人間は顔パスで通したいのだ。「よぉ!おれ、おれ」で通じる世界に慣れきって生きてきたのだ。
私の子供の頃、玄関に鍵をかけている家など、どこにもなかった。開けっぱなしだった。それと今のようにセコムで防御しているのとどちらが幸せか。
人を信用していないから、いちいち、こういう面倒なことになる。
パスワードも使い回しは危険ですよ、とか言っているが、何通りものIDとパスワードを覚えられるわけないだろ!
そのうち自分の家に入るにも鍵だけでは足りず、IDとパスワードが必要になるかもしれないぞ。泥棒も入れないが、自分も入れない家、ディストピアだ。