相続登記が義務化される
「えっ!今まで相続登記は義務ではなかったの?」そう、相続税の申告期限は10ヶ月だが、遺産分割には期限もないし、相続登記を放ったらかしのままでも罰則はなかった。だから先代や先々代名義のままになっている土地も珍しくはない。
それが原因で所有者が分からない土地(所有者不明土地)が、全国で約2割(九州全土)ほどの面積になっている。
所有者が分からないとその土地を利用することもできないし、買い取ることもできない。それが原因で公共事業や災害復旧事業にも支障をきたす。その解消のための法律が今年の4月21日に参議院で成立した。「改正不動産登記法」と新法である「相続土地国庫帰属法」そのほか手を加えた法令は20本以上に及ぶ。
将来値上がりするかもしれない、と買った北海道の原野とか、途中で開発が頓挫した別荘地や農業をやる気もないのに相続してしまった調整区域内の農地等々、捨ててしまいたい土地の処分に困っている人たちは多い。
だからこういう面倒な土地は遺産分けでも押しつけ合いとなり、最悪は相続登記もしないまま放置される。こういうことで「所有者不明土地」が全国に存在する。
そこで相続登記が義務化されることになった。まずは遺産分割の期間制限(相続開始から10年経過すると特別受益や寄与分の主張をすることができない)「相続が起きて3年以内に相続登記をしないと過料(10万円以下)の制裁を受ける。また、所有者の住所変更の登記も2年以内と義務付けられた。過料(5万円以下)の制裁もある。2024年から施行予定だ。
また登記漏れを防ぐため、登記官が不動産の記録を証明する制度が新設される。これにより所有不動産記録証明書の交付を請求することにより全国の土地を名寄せすることができる。いままでは固定資産税の免税点以下なら税金がかからないので、市町村から課税通知が来なかったが、これからは日本のどこに土地を持っていても名寄せによって分かることになる。これは将来、マイナンバーとひも付けされることになるのだろう。
やっかいな共有土地の解消のための手続きも手当てされている。いらない土地を国に押し付けるための要件も細かく定められた(これらの要件は相続税の物納の収納手続きとほとんど同じ)。ただし、審査手数料と10年分の管理費を支払う必要はあるが……。
いらない土地を捨てるのも大変だ。
相続対策で重要なことは税金対策ではない。「余計なものは持たない」これに尽きる。
シンプル・イズ・ベスト。子孫にやっかいな土地は残さないことだ。