「あれれれ~!?、ない。どこにも書いてない。………どないなっとんねん」
与党の令和4年度税制改正大綱が12月10日に公表された。税理士業界をざわつかせ最も注目されていた「相続贈与一体課税」はどうなるか?
相続贈与一体課税とは、たとえ生前贈与してもそれを遺産に持ち戻して課税対象として相続税を計算する方法。生前贈与の節税効果が無効化される課税方式のこと。
しかし、どこにも書いてない。改正は見送られたのだ。
今年の税務相談で多かった質問が「もう、110万円の生前贈与がなくなるんでしょ、これからどんな相続税対策をしたらいいんでしょうか?」
新聞で読んだとか、週刊誌に書いてあったとか、切り抜き記事を持って来られる人もあった。
なかには今年の12月末日までに生前贈与をしておかなければならない、などとの噂に惑わされて焦っていた人が多かった。
「いままでやってきた生前贈与はみなぱぁ~になりますか?」などと心配する人さえいた。
どうしてこんな噂が世間をざわつかせていたかというと税制改正大綱では3年も前から「今後の検討項目」というなかで相続贈与一体課税をやるぞ、やるぞとアドバルーンをあげていたからだ。
我ら税理士は「こりゃ、本気だぞ」と思うがな。もし改正が実現したら影響は大きいと構えていたので、拍子抜けだ。
「大山鳴動して鼠一匹も出ず」って感じ⤻?
税理士が110万円の贈与を提案たところで金にはならない。なんせ110万円の贈与なら申告不要なのだから。
仮に姑息な手段として111万円の贈与を提案すれば申告する必要があるが、それで申告書作成報酬を請求する税理士はいないと思う。もしそんな税理士がいたとすれば、払う方もアホ、受け取る税理士もアホだ。
110万円贈与を長期間続けると間違いなく相続税の節税になるし節税効果も大きい。
110万円贈与は素人でも分かりやすい。「なんでそんなことをして相続税が安くなるんですか?」と訊いてくる人もいない。難しい理屈を説明しなくてもよいから話が早い。
しかし、わたしは110万円贈与を積極的に勧めたことはない。お金に困っていない子や孫に贈与してやることはないのだ。
年間110万円といえば、月にすればほぼ10万円。資産家からすればハシタ金かも知れないが、これが毎年、子や孫のフトコロに入ると金銭感覚がマヒするに決まっている。そのうち子や孫が「今年はまだ?」と言い出すことになる。
生前贈与しても節税にはならないとなれば誰も生前贈与をしなくなる。そうなれば高齢者から若い世代に資金は流れず、一層不景気になる。政府はそこに気づいたか?