人生の締めくくりに財産を遺贈寄付

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人生の締めくくりに財産の遺贈寄付

 人生の締めくくりに何か社会貢献したい、と思う人たちが増えている。特に最近は「おひとりさま」の増加だ。配偶者も子供もなく兄弟姉妹もなければ財産は国のものに。そんなことなら自分の財産を思い入れのある団体へ寄付したいと希望するのは当然だ。遺言書に現金××円を認定NPO法人○○へ遺贈する」と記載すれば相続財産はその金額分だけ財産から差し引かれ相続税も安くなる。

 統計によれば遺贈寄付をしたい人は全体の2割~3割になっている。しかし、実際に遺贈寄付する人は1%にも満たない。これはどうしたことだろう?

 日本の税制は寄付に対して冷淡だ。「おまえらは寄付するより税金を払え!その税金を分配するのが国の仕事だ。勝手なことすな!ちゅうとんねん」

 財産の遺贈寄付については現金預金で遺贈寄付した場合不動産等の現物で遺贈寄付した場合とでは税金の取り扱いが違う。また亡くなった人が遺贈寄付したのか、それとも相続人が亡くなった人の意思を継いで寄付したのか。さらには寄付先が税制優遇団体かそうでないのか、弁護士や税理士でも不慣れな分野で即答できる人は少ない。

 それに関係する税目も相続税と所得税を想定しなければならない。特に厄介なのが所得税の「みなし譲渡」の問題である。個人から法人へ所有権が移った時に時価で譲渡したとみなして課税問題が起きる。これが素人の人には分からない。「え!どうして寄付をした方に税金がかかるの?」ということになり、その理屈がなかなか理解してもらえない。

 例えば亡くなった人が住んでいた自宅の敷地と家屋について、子供たちが地元に帰ってくる気がなければ、相続したがらない。「そんなことなら、いっそのこと今まで住んでいた市に寄付してしてしまえ」てなわけで遺言で市に自宅を寄付したとする(不動産で寄付を受ける団体はほとんどないが)。そうするとその不動産は相続人を素通りして市のものになる。その場合の税金は亡くなった人で準確定申告をする。その譲渡税は相続人が払うことになるのだ。すると「なんでやねん」と大騒ぎになる。このようなケースでも「居住用財産の3千万円特別控除」の特例適用の可能性はあるにはあるが……。そんな遺言を勧めた専門家は冷や汗ものだ。

 そうは言っても、私は財産の遺贈寄付を選択肢のひとつに加えるのはよいことだと思う。近い将来、相続贈与一体課税が導入され、生前贈与しても節税にならない税改正が予定されている。  

 生前贈与をすることによって子供や孫たちの金銭感覚がマヒしてしまうのではないかと気に病むくらいなら、社会福祉法人や認定NPO法人へ寄付した方がよほどマシだ。そうすれば相続税は確実に安くなるし子供たちもオヤジを見る目が違ってくる。

投稿者: ihanamura

花村一生:昭和23年生、福岡県出身 さまざまな職業を遍歴後、昭和58年税理士として開業 花村会計事務所所長 法人の顧問を中心に開業したが、会計業務が性分に合わず、数年で 手を引く(生来のずぼらから会計業務は行わないにもかかわらず、 会計事務所の看板はそのままになっている) その後、相続税申告と不動産税務に専門特化して今日にいたる。 特に不動産の時価と評価額の矛盾に憤りを持っており、相続税の物納について 異常ともいえる情熱を燃やしている。一時は物納申請件数は日本トップクラス。 主に土地持ち資産家の相続案件を得意とする。 国土交通省外部団体の「都市農地活用支援センター」のアドバイザーとなっている。 納税者のために考え行動することがモットー。税務署と闘うことも辞さない。 著書:新日本法規出版「社会生活六法」税金分野担当

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