消費税のインボイス制度
令和5年の10月1日から消費税のインボイス制度が始まる。
インボイス制度、正式名称は「適格請求書等保存方式」という。インボイスを発行するには税務署に登録をしなければならない(免税事業者は登録することができない)その登録申請の手続きが今年の10月から始まっている。
今までの中途半端は消費税が、いよいよ総仕上げの段階に入ってくる。インボイス制度が導入されると免税事業者が事実上、市場から締め出され、世の中を大きく変えてしまうほどの大改正となる。
免税事業者とは基準年(前々年)の課税売上高が1000万円以下の事業者のこと。例えば多くの農林漁業従事者・フリーランサー・業務用賃貸不動産の賃貸業・理美容業・一人親方等々。個人・法人をあわせて全事業者数の約6割の事業者に影響を与える。
たとえば貸店舗、貸倉庫、貸事務所等の不動産賃貸業で年間の賃貸料収入が1,000万円以下なら免税事業者だ。しかし、これがインボイス制度導入後どうなるかだ。
(ある質疑応答)
(Q)私は貸倉庫を3棟所有しており、前々年の年間家賃収入は900万円です。私は免税事業者なのでしょうか?
(A)そのとおり!あなたは免税事業者です(Q)でも、私はいままで家賃に消費税を上乗せして請求していました。消費税は請求してはいけなかったのでしょうか?
(A)そんなことはありません。免税事業者でも消費税を上乗せして請求することは今までは何の問題もなかったのです。これが「消費税の益税問題」として以前から指摘されていました。テナントは税金として消費税を支払ったのに、国には入らず、家主のポケットに入ったままなのですからたまりません。テナントにしてみたら詐欺に遭ったようなものです。
インボイスというのは消費税相当額の「金券」付きの請求書のことです。例えば家賃30万円、消費税10%の3万円、合計請求額が33万円と仮定すると、イボイスなら3万円の消費税分が後日、預かり消費税と相殺することによって現金化できるのです。しかし、あなたは免税事業者なのでインボイスを発行することはできません。テナントは消費税3万円は結局コストになってしまうのです。
借主は「え!大家さん、あなたは今まで免税事業者だったのですか?それならこれから消費税分は請求しないでください、とか、今後はインボイスを発行してくれる家主さんの賃貸建物に移ります」と言われてしまいます。
(Q)私はどうすればよいのですか?
(A)あえて課税事業者の選択届出書を提出して課税事業者となり、さらに簡易課税の選択を検討することです。
あなたの場合は次のように試算できます。
年間家賃収入 900万円
預り消費税(10%) 90万円
簡易課税の仕入税額控除 △36万円
差引き消費税の納付額 54万円
この場合、消費税の納付額は54万円となります(激変緩和措置はありますが………)
(Q)「そんなに払うの!消費税をナメていました。これじゃあ、零細事業者は生きていけないじゃありませんか!」
(A)消費税は他人様から預かったお金です払えなければネコババと同じです。事業者が、赤字か否かは関係ありません。事業者は消費税の世界では単に徴税マシンに過ぎないのですから。